弥生

三月になった。
月末には桜が咲くのだと
気象予報士は
相変わらずテレビジョンの
四角い枠の中で言っている。
私も
そうだ桜が咲くのだろう
なにせ三月だから
そう思っている。
当たり前のことを
権威のバトンを持つ人が言うと
何かとても新しい発見のように
聞こえる。
テレビジョンは権威のバトンを
持っている。
私はテレビジョンを閉じて
湯の温度を測り
丁寧に珈琲をいれる。
このところは八十四度で
珈琲をいれることにしている。
私は今のところ私のためだけに
生きている。
イースターブレンドという
珈琲なのだそうだ。
イースターは春分の後の
満月の日なのだそうだから、
その頃にはもう桜が散っているだろう。
どんなことも
はかないゲームである。

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