やさしい暴力

あらゆる暴力が世の中にはある。
そのようなことに人々は気づいておらず、
自分が傷ついて血を流しているのに
何も手当をしないで、足を引きずりながら
荒野を歩いていたりする。
殴られることだけが暴力ではない。
友達に無視されることも、
税金が上がることも、
寒いことも、仕事が辛いことも、
体が辛いことも、
病に蝕まれていることも、
年老いてゆくことも、
道が歩きにくいのも、
温かい食事にありつけないことも、
恋人が振り向かないのも、
肉親が死ぬのも、
テレビで犯罪や災害のニュースを見せられるのも、
やりたくない仕事をするのも、
聞きたくないことを聞くのも、
試合で負けるのも負かすのも、
みんな暴力である。
誰もが被害者であり、加害者である。
絶望の扉に表札はかかっていない。
人々はそうして傷ついている。
治療をしなければならない。
しかしまた、人は暴力によって変えられてゆく。
暴力でしか変わらない。
世界は暴力で溢れていて
私はそういったことを恐ろしいと思っている。
暴力からは遠ざかりたい。
障壁を乗り越えたと言っている人の言うことを
真に受けてはいけない。
彼はきっと乗り越えたのではなくて迂回したのだ。
けれど、どちらでも同じことである。
同じに見える。問題ない。
目についた汚れは早めに拭き取る必要がある。
暴力に成長しないうちに。
あなたはよく頑張っている。
あなたが一番それを知っている。
そして眠ろう。
深く潜ろう。
空っぽの夢を見よう。
それはもう夢ですらない。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク