Satori

世界は黄色く
それは風によって移動する。
カサカサと音を立てて
道路に渦巻いている。
ずっと昔、「Satori」という名前の
スクリーンセーバーがあった。
サイケデリックな波紋が
画面の中をうごめいていた。
そんな感じを思い出した。
いつまでたっても信号は変わらず
私は
半分以上散ってしまった
イチョウの木を見上げていた。
それから信号は押しボタン式であることに気づいた。
なるほどボタンを押さなければ
この道を渡ることはできないのだ。
私はボタンを押す。
それはささやかなリクエストだ。
信号を変えるのではなく
変えて欲しいと誰かにリクエストをしている。
イチョウはいつから
こんなに黄色くなったのだろうか。
昔の黄色はこんなに明るい色ではなかった。
そんな気がするのだ。
私の罪は何ですか。
私は風に聞いてみる。
裁判官は罪を知らせないまま私を裁いた。
物語の脚本はまだ出来上がっていないのに。

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