諸行無常

地球という星の片隅に
偶然生えた緑色の苔のようなものだと
最近思う。

些細な偶然の連鎖が描く
細く短い糸のような軌跡の上を
辿って歩く私には
夏が見えている。

そして八月の粒は残り少なくなっており、
私はまたひとつ見えない線を通り過ぎる。
この頃、雨上がりに立ち会うことが多い。
夕日に照らされる東の空に
虹が現れた。
それは二重の円を描いていた。
私は消えることが分かっているものを
消えるまで見ていた。

古いレコードが増えたので、
古いレコードを入れる新しい棚を作った。
新しいものを
置いておくだけで古くなる。
当たり前だったことが
不思議に感じられるようになると
すでに次の領域に足を踏み入れている。

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