葉月

私に八月が来た。
蝉は鳴き
雲は白く
空の果てに入道雲は盛り上がり
稲妻は心を射貫き
土砂降りの雨音は
様々な過去を
排水口に流し込む。
そのようなものを
「夏だ」と言ってみるけれど
だからといって
踏み込むペダルの重さは
ちっとも軽くはならない。
暑中お見舞い申し上げます。
このごろそんな葉書は
ちっともポストに届かない。
もう
時代じゃない。
遠すぎない
しかし近くもない。
物差しを
奪われた私たちは
「距離」というものも
失ったのだ。

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