怪物

見えない人と
見える人がいる。
見える人は四角い硝子の向こう側に
その可愛らしい怪物を見つけて
そしてボールを投げる。
見えない人にとっては
あるいは見ない人にとって
それは不思議な光景である。
そのようにして
一夜にして
限定的に怪物が見えるようになった人たちを
ゾンビのように歩かせる。
今の世界はそのようにして
価値観というものを
束ねてゆく。
良いのか悪いか
そういうことではなくて
そのようにして地表に広がる私たちは
見えない波によって
ひとつに補完されようとしている
それが真理なのであろうと
私は思っている。
音階は昇ってゆく時よりも
下がってゆく時の方を少しゆっくり弾くの
波がそうであるように
引く時の方をゆっくり弾くの
そうすると自然に聴こえるの。
彼女はそう言った。
すべてのことは
自然が手本になるのだと思う。

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