キウイフルーツ

キウイフルーツの旬は冬だそうだ。
長い間夏だと思っていた。
ずいぶん昔のこと、
ある日母が近所でキウイの苗木を貰ってきて
家の前の畑に植えた。
キウイはぐんぐん伸びて、そして実を付けた。
「あぁなったなった」
母はそう言って実をもぎ、皮を剝いて切り分け
皿に大盛りにすると朝の食卓に出した。
キウイはもいでももいでも、どんどんできた。
恐ろしい程できた。
母は料理のバリエーションというものを持たなかった。
朝だけではなくて、昼も夜も
キウイの皮を剝いて刻んだだけのものが
皿に盛られ、どん、と置かれた。
最初は「お、キウイかめずらしいね」などと
家族は言って食べていたが、そのうちに
「またキウイか」というようになり、
あまり手を付けなくなった。
そればかりか「同じ物を食べさせ続けられるのって
ほぼ拷問だよね」などと言った。
母ばかりがキウイを食べていた。
まるで修行のようだった。
やがてキウイの季節が終わり、キウイは姿を消した。
母はそれ以来、二度と食卓にキウイを出すことはなかった。
けれど私は
なぜかその年のことをよく思い出す。
それは夏の記憶なのである。

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