倍音

鬱陶しい空と湿った風
六月のページが過ぎてゆく時、
広い河の淵に立って
流れてゆくものをただ無言で
受け入れているような気分。
歌でも歌えればいいのだけれど。

アコースティックギターの弦を
新しいものに張り替えた。
前に弦を張り替えたのは
いったいいつだったか
思い出せないくらい過去だった。
確か巻き数が思った通りにいかなくて
何だか気に入らない感じだけど
まぁいいやと思ったのだった。
新しい弦は格安のもので
ひとつの袋に六本まとめて入っていた。
慎重に巻き数を考えて張り、
余った部分をニッパーで切った。
チューニングをして音を出してみると
新しい弦は良い音がした。
色々な高さの音が混ざっている。
新しい弦には倍音が沢山含まれている。
新しいということは
若いということは
それそのものの本来よりも
何か違った沢山のものが含まれているのだ。
いつも新しくいたい、と思う。

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