私は果たして私の物語の主人公なのだろうか
そんなことを時々考える。
作家は言った。
主人公には嫌いな人を据えることが多い。
なぜなら、好きな人が主人公だと
やがて正義を語り始めるからだと。
正義は物語を破壊し胡散臭いものにしてしまう。
そのようなものに人は
近づきたがらないものなのだろう。
私は私みたいなものが好きではなく
そう考えると主人公にしておいても
いいのかもしれない、と思う。
夜が更けて
予報通りに雨が降り始めた。
窓を閉めていると蒸し暑く
窓を開けると肌寒い。
田舎ではきっと田んぼに水が張られ
蛙がうるさく鳴いているだろう。
私が求めているのは音楽ではなくて
音響なのかもしれなかった。
どちらにしても
時間を消費する体験であることは
確かなことだけれど。