睦月

この頃、突然日が暮れるような気がする。
以前からこのような日の暮れ方だっただろうか。
何だか時間の感覚がおかしくなったのかもしれない。
とにかく太陽をどぼんと沈めるように
日が暮れてしまうものだから
私は光と時間の感覚がつかめなくなってしまった。
そうして日が暮れた後に
南東の空を見ると、小さな光の点が
等間隔にあって動いている。
それは航空機の光である。
どこか遠くから飛来して、羽田空港に降りようとしている。
その光をぼんやりと見ている。
何十キロも離れた場所から放たれた光が
私の目を射貫いているのだから
それはとても不思議なことだと思う。

去年と今年の間に
どのくらいの段差があったのか
私にはよく分からないけれど、
人と会わないということが
私にとっての段差を示しているのかもしれない。
ふるさと、というものは消滅した。
私の遺伝子の上流にあったものは死に絶え
また下流にも存在しない。
そうやって関係というものは一方的に損なわれ
そして消滅する。
「田舎に帰らないのですか」
年が暮れる頃に時々訊ねられるが、
私には帰る田舎など無くなったのである。
そんな日が来ることを想定していなかったわけではないが、
それは火の落ちた線香花火のように
儚いものだと感じている。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク