肉屋

霧のような雨は
降るというよりも漂っている。
人々は
傘を差したり差さなかったりして
緩やかにカーブを描いて下る道を
歩いてゆく。
日曜日には肉屋が閉まっている。
そんなことを私は知らなかった。
その通りには三軒の肉屋があったが、
いずれの店もシャッターを下ろしていた。
日曜日には肉を仕入れることが
できないのかもしれない。
ソーセージ屋は開いていた。
しかし客は居なかった。
私は肉を買いたいわけではなかったから
肉屋が閉まっていることに問題はなかったが、
街の肉屋というものが
どういうものだったか
思い出したいと思ったのだ。
八月が残り少ない。
からっぽになってしまうのは
過去でも未来でもなくて
今というものなのだろう。

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