月別アーカイブ: 2015年8月

肉屋

霧のような雨は 降るというよりも漂っている。 人々は 傘を差したり差さなかったりして 緩やかにカーブを描いて下る道を 歩いてゆく。 日曜日には肉屋が閉まっている。 そんなことを私は知らなかった。 その通りには三軒の肉屋が … 続きを読む

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ポエジー

必要か必要じゃないかじゃなくて 詩情というものは 最初からあるんですよ。 と詩人は言った。 あるものをどのように捕まえて かたちにするのかということ そもそも創作というのは そういうことなのだと思った。 無いものを作り出 … 続きを読む

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警報

雨は、 突然降り出すのではない。 ずいぶん前から準備をしている。 空の向こう側に もくもくと立ち上がる積乱雲を 君は見ただろうか。 それはやがて地表に落下して 私の足を濡らすことになる。 未来は ある程度予測できることで … 続きを読む

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寿命

風の音が聴こえないんです、と滝沢は言った。 風の音って? ファンが回って風が出るじゃないですか。 あぁ冷却ファンのことね。 私は排気口に手を当ててみた。 確かに空気は流れていなかった。 ばらしてみるか。 私たちは、ねじを … 続きを読む

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葉月

およそ三十くらいの数字が書いてある 紙をめくると 八月の世界が目の前に現れる。 そこにはエジプトの猫が佇んでおり 足をそろえて海を見ている。 いや、人を見ているのかもしれない。 魚を探しているのかもしれない。 夏は塩の匂 … 続きを読む

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