回転

レコード盤をターンテーブルにのせて
スタートボタンを押し、針を落とす。
それから、ソファーに座って本を読み、
およそ二十分かそこらの後に
私はまた、レコード盤をターンテーブルの
上でひっくり返したり、取り替えたりして
同じように回し、針を落とし
それからまたソファーで本を読む。
そういうことを繰り返していた。
レコード盤は右回りに回っていて
針は内側に向かって進む。
右巻きの渦を音に変えて行く針の音とともに
私は文字をトレースしている。
どんなことも
身体的な感覚を持って進めることで
もう少し意味のあることになるのではないかと思う。

今日はあまりに黒い雲が南の空に漂っていた。
私は窓越しにそれを見ていた。
六月は祝日が一日もない。
そういうことを嘆いてみてもしかたがないので、
自分で祝日を作った。
地引き網のように北の空気を囲う前線の帯は
日本の形に伸びている。
ベランダに洗濯物を干したけれど、
すぐに雨が落ちてきたので、取り込んで
部屋の中に吊している。
天井に煌々と輝く照明をつけるのは
あまり好きではない。
元来、薄暗いところが好きなのだ。
暗いところではなくて、薄暗いというところが
重要なところだと、分かってくれるだろうか。
梅雨のことを嫌悪してはいない。
雨の日に適切な靴を持っていないだけだ。

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