水無月

薄く開けた窓の隙間から
水無月なりの冷気が流れ込んで
部屋に展開していた。
薄いタオルケットだけで眠っていた私は
寒さで目が覚めた。
足を擦り合わせて暫く耐えていたけれど、
別に耐える必要などないのだと思い立って
起き上がって毛布を引っ張りだし
それにくるまった。
足を温めると
幸福が私を満たしてゆくのが分かった。
そう、幸福とはこんなにも
簡単なことだった。
誰の手も借りる必要がない。
そう思いながら再び眠りに落ちた。
眠ることに恐怖が伴わないのは
また目覚めるということが分かっているからだろう。
或いは信じているからだろう。
そんな保証などないのだけれど。

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