投棄

このゴミを出した方はお引き取りください。
と書いた黄色い紙が貼ってあった。
集積場の前にそのゴミ袋はぽつんと置いてあった。
見覚えがあった。
それは数日前に私が出したゴミ袋だった。
黄色い紙には細かいチェックシートが付いていて、
混合ゴミです。
乾電池は有害ゴミです。
分別してください。
というところに赤いペンでチェックが入っていた。
私は周りを見回してから
そっとゴミ袋を持って部屋に帰った。
中身を出してみる
古い鍋、硝子の花瓶、大量のフロッピーディスク、
使えない筆記用具、動かない電卓、いらないCD-Rとケース
そういったものの中に、
昔のMDウォークマンの小さなバッテリーケースがあった。
中を開けると、単三電池が一本入っていた。
ゴミの中にそんなものが含まれているとは
自分も気付かなかった。
しかしこれを発見するなんて、中を開けて
細かく吟味しないと分からないはずで、
ゴミ収集人がいちいちそんなことをしているとは思えなかった。
いったい何故分かったのだろう。
何か電子的に探索する装置を持っているのだろうか。
それとも直感のようなものだろうか?
私は各ゴミを種類別に小分けし、それぞれを紐で結わえ、
慎重にゴミ袋に戻した。
混ざって見えないように。
勿論、乾電池とそのケースは取り除いた。
そして日が暮れてから
一階のゴミ集積場に持っていった。
棄てるのも棄てられるのも
手数が必要なことだ。

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