バランス

地上九階の世界は
いつだって渦巻いている。
窓の隙間から音が忍び込んでくる。
それは水底と同じ。
地表と空の間にあって
水が行き来するのを知らぬ顔で見ている。
ちょうどバランスがとれているから、
水はお互いを巡るのだろう。
一方通行ではないということは
バランスがとれているということなのだと
私は思うのだけれど、
しかしそれがほんのわずかな
偶然によって成り立っているということを
誰もが忘れている。
馴れるということは愚かなことだと思う。
馴れることがすなわち
バランスなのだと言ってもいいかもしれない。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク