寒桜

寒桜が咲いていました。
染井吉野ばかりが桜ではないと
わたしは思います。
雨は上がったばかりで、
空はどんよりと重い顔をしていました。
花びらは濡れないと開かないのだと
誰かが言っているのを聞いたことあります。
低いコントラストの世界で
薄紅色の花びらはもう
はらはらと舞っていました。
小さな子供達は、やはり桜の下で
それをてのひらで捕まえようと
伸び上がっていました。
それがわたしには何かの踊りのように見えます。
よろこびというのは
何かを捕まえようとすることかもしれません。
桜が与える喜びは
ほんのひとときのものですが、
だからこそ捕まえるべきなのでしょう。

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