「人は物語を紡ぎながら生きてゆくものです。
あなたの物語の中では、あなたが主人公でなくては
なりません。自己肯定感を持たなければなりません。
決して茫漠感を持ってはなりません。
しかし、自分を主人公に置けない人が増えているのです」
テレビをつけたら、そんなような言葉が流れ出してきて、
私は上着を脱ぎかけたまま固まったのでした。
テレビには、あまり好きではない小説の作家が出ていて、
戸籍の無い子供たちのドキュメントについて
コメントを述べていました。
ありふれていて、少しキザな言葉のようではあるけれど、
何かが私のどこかに引っかかる気がしました。
素直に流れてゆかないものはすくい取っておくべき
ものなのだろうと思います。
私はメモを取り出して、それを書き留めました。
この頃また季節が動いたことを感じます。
いつだって季節は動いているのですが、
雨が降る度に、塗り替えられてゆくものを
私は季節と言っているような気がします。
雨の予報が出ていると、あぁまた何かが
変わるのだなと思います。
そういうことを丁寧に感じる必要があると
思うのです。
焼却場の煙突から昇る熱い息のようなものが
やがて見えなくなる日が来るのでしょう。
私は、もう少しビジュアルに
物事を考えればよいのかもしれません。