アナザーフィールド

父の葬儀を二度もするとは思っていませんでした。
しかし、それはそもそも父が決めた事でした。
落慶法要の前に本葬をしない方が良いのだと
彼は言ったのでした。
経緯はさておいて、そのために
色々なことを一度にしなければならなくなって、
何がなんだか分かりませんでした。
一日のうちに、黒いネクタイと白いネクタイを
締め変えなければなりませんでした。
大勢の人、人、人。
私は冷たい畳の上に座って
それを見ていました。
着る物を間違えたのです。
こんなに寒いとは思っていませんでした。
寒さに震え、足の痛みに耐えなければなりませんでした。
僧侶の死は遷化というもので、
要するにフィールドが移動しただけ、なのだそうです。
そして餅が撒かれました。
赤と白の幕の上から
集落の人々は勢いよく餅を空に放ちました。
仮装している人もいました。
紅白の餅でした。
そうです
何もかもが一度に来るのが私でした。
そういうことを思い出しました。
結局は本質的なことに戻ってくる。
生きるということは
ごまかせないものだと思います。
私の本質など、とうに明らかになっていて、
裁きを待っていたのでしょう。

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