夜の公園

私は
夜の公園に忍び込んだわけではなくて、
ただ単に日が短くなっただけでした。
夜は時刻のことではなくて
太陽の都合なのでした。
足元でかさかさと音がしました。
それは乾燥した木の葉です。
辺り一面、落ち葉の匂いがしました。
これからの季節は
乾燥を促す季節なのです。
乾いた物は乾いた音を奏でます。
私はかつて命だったものを
柔らかく足の裏に感じながら
公園を歩きました。
ベンチに沈むカップルには
もう顔がありませんでした。
木立の上から月がちらちらと
覗いていました。
私は公園を横切ってあちら側に
ゆくところなのでした。
公園は目的ではなくて
単に通り道だったのです。
出口付近にある店の
灯りが暖かさを増しているように見えるのは
静けさが増しているということなのでしょう。
それが私にとっての
文化の日なのでした。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク