月蝕

月は赤くなっていた。
それは羞恥ではない。
それは燃えているわけではない。
なぜ赤いのか、
科学的に説明することはできるだろう。
しかし科学もまた万能ではない。
なぜなら
分かっている道具で考える学問だからである。
分からないものを
解釈するわけではないのである。
いやそのようなことは
今考えなくともよいことだった。
とりあえず影である。
私たちの星の影である。
沢山の人々が
ペデストリアンデッキの上に乗っていて、
スマートフォンを空に掲げていた。
切り取られたものは
ただ夜なのではないだろうか。
2011年の12月12日あたりに
私は月蝕を見ている。
この古い記事に書いている。
たどりつく先はまだ定義できていない。

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