長月

九月の扉が開くと、
印刷装置の黄色いインクが切れている。
私にとってはそのようなひとページである。
しかし九月は
雨の季節でもあることを
忘れないで欲しいと空は言うのだ。
安物の傘は何処かが壊れていて、
柄を伝って雨が漏れてくる。
高い傘がいいに決まっているのだけれど、
高い傘も、安い傘も
長い期間、私の手元に居たことはない。
彼らはある特定の期間が過ぎると
私の前から姿を消すのだ。
どこか遠い所に運ばれて行って
二度と戻ってこない。
それはきっと、どんなものでも同じなのだ。
永遠などどこにもないことを
私は知っている。

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