侵入者

最初に喉がとらえる。
それからはいつも決まったパターンで発熱する。
侵入者を追い出すことはできず、
体内で闘うしかないのだけれど、
それはかなり疲弊することで
高い温度を保持して
停止したような時間の流れを
耐えなければならないのだ。
単なる風邪なのだから
どうせ私が勝つのだと分かっている。
しかし、年々闘いは激しくなるような気がする。
本当に勝つのかな。
もしかしたら負けるのではないだろうか。
ふとそう思ったりする。
妙な夢をたくさん見て、
それでも経過しない時間を
ラジオを薄く流すことによって
辿ろうとする。
生きるということは、こうして
生命を脅かす外部の敵と
闘い続ける事なのだなと思う。
しかし、いつの日か確実に負けるのである。
私の時間に永遠などというものはないのだから。
引退などという選択肢はなくて
負けるまで闘い続けなければならない。
なんという不条理でしょうか。
いえ、それが道理というものでしょう。
誰かが言う。
それは紛れもなく自分の声だ。
同士はおらず、
私は昔も今も独りで闘ってゆく。
そういったことを再確認する日々である。

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