雪でした。
私はずいぶんと長い間
雪を見ていなかったはずだけれど、
まるでよく知っていることのように
粉雪が舞うのを見ていた。
冷たい外の世界と
暖かい内の世界の間に
硝子窓があって、
それは曇ってお互いを朧にしている。
異なるものとの間には
曇った壁がかならずあって、
しかしそれがあることによって
お互いの幸福というものが守られている。
すごく距離が近くても
ちゃんと壁があることによって
自分らしくいられることがあるものだ。
そんなことをぼんやり考えていた。
Kate Wolfは44歳で死んだ。
1986年のことだった。
after a long battle with leukemia とあるから
白血病と闘ったのだろう。
Lines on the Paperは1977年のアルバムで
昨日、ニューヨークの店から送られてきた。
この人が向き合ってきたのは、
自分というものだったのだろう。
人に対して何も強要しない声で
彼女は歌うのだ。
冷たい夜のこちら側で
私はそれを聴いている。
そして気付く。
十代の頃と何も変わらない
他の何者でもなく音楽だけが頼りだということに。