霧の中

ミラノは霧の中だった。
川があるところには霧がある。
川から生まれた霧は光を遮って
見える物を朧にする。
それはとても静かに訪れ
人々を孤独にする。
私は霧の町で育った。
朝、堤防の道を車で走る時も
フォグランプの黄色い光が必要だった。
自転車で走れば着衣は
しっとりと濡れた。
それはすでに想い出でという
箱の中に収まってしまっているが、
霧に出会う度に
箱の蓋が開いて霧が漏れ出す。
来たところも
行くところも
そういうところなのだろうという
気がしている。
そういう霧の世界を
書きたいと思っている。

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