瞼を閉じたような
細い月が昇っていて、
脇に金星のきらめきがあった。
それはとても美しかったけれど、
写真に撮っても
こういうものは絶対に写らない。
見ているものを
そのまま保存する方法は
ないのだろう。
物語というのは強弱のことではないかとこの頃思う。
強さから弱さに移るとき、
または弱さから強さに移るとき、
人の心は物語を紡ぐのではないだろうか。
そこに何か特別なことが用意されていなくても、
強さが移り変わるだけでよい。
物語を作ろうとするのではなくて、
ただ濃淡を作るのだ。
物語は後からついてくる。
そんな気がする。