録画した番組をぼんやりと観ていた。
結成して四十年になるバンドが
再結成して演奏することについての
ドキュメンタリー的な番組だった。
最近、このような番組が多い。
それは幼い頃によく聴いていた音楽で、
曲が流れてくると、
どの曲も自然に歌えてしまう。
懐かしいって何だろうか。
こういう番組を観ても
私の中に「懐かしさ」という感情は沸いてこない。
いやたぶんそうではなくて、
自分の中の気持ちと、懐かしいという単語を
結びつけたくないのだろうと思う。
それを「懐かしい」と言わなくても
いいのではないかと思っている。
だって、何もかもを過去のことにしたくない。
かつて夢中になっていた気持ちを
「懐かしい」などという箱に収めたくはない。
それはいつでも自分の周りに
漂っているものであってほしい。
そういう意味で私は
整理整頓ができない人間なのだと思う。
したくないだけなのだ、とも思う。
しかし、不思議なことに、
心の中ではまったくそう思っていないくせに、
会話では「懐かしい」という単語を時々使う。
たぶんその方が、共感を伝えようとした人への
返答としては正しいような気がして。
この感情を、どういう言葉に置き換えるのが
適切なのか、考えているけれど、
答えはまだ出ていない。