昼の闇

いつだって少しだけ遅れる。
遅れてもいいだろうと思っているわけではなくて、
遅れたくはないのに
どうしても少しだけ間に合わない。
ほんの少しでも
それは絶望的な隔たりを持って
強力に自分を特徴付ける。
間に合わない人の焦りというものを
抱いて生きてゆくことになる。
夢の中でもそれは変わることがなくて、
びくびくしている。

「黒い雨」を読んでいたせいか
何だか重苦しくて
だるい熱のようなものが身体の中にあって
横になっていた。
風の音を聞いて眠った。
昼間の眠りは夜の眠りと違って、
安息より焦燥を含んでいる。
少しだけ休むつもりが、
気付いたらベッドが闇に沈んでいて、
遠くを救急車が行く音が聞こえていた。
こんな時は音楽がなければ
抜け出せない。
ニールヤングのメイシーホールライヴをかけて
からだのあちこちに潜んでいる闇を取り除く。
曲の合間に必要なのは静寂ではなくて
拍手である。

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