八月は路上に棄てる

もう八月が終わるよ早いね
などと川本は言うけれど、
私はちっとも早いと思わない。
私のひと月と、川本のひと月は、
はたして同じひと月なのだろうか。
私にはまだ八月が残っている。
もう八月など紐で縛って廃品回収に出したいくらいだ。
誰か無料で引き取ってくれないだろうか。
私は雨を聴いている。
夜がふけてしまった。
私は太陽に照らされる面とは
反対側の世界に居るので
雨を見ることができないのだ。
しかし、長い経験から、
その音と、
肌に触れる空気によって、
雨が降っていることが分かる。
またしても季節の緞帳が降りてくる。
ラジオのロッドアンテナを伸ばして
夜の声を聴こう。
空を行く波を聴こう。
誰も私のことなど知らぬうちに。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク