夏はよる

雲は甲羅のように割れていて、
その間から月が光をまとって姿を現す。
私は少し悲しい映画を観て
デッキの上を歩いている。
陽が暮れる頃に降った優しい雨は
素早く靄となって
肌にまとわりついてくる。
背の高いマンションに点々と灯る
オレンジ色を見上げながら
夜を咀嚼している。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク