飛行体

雨と雨の間の日曜日、
私はベランダで洗濯物を空に掲げて
雲の起伏を見ていた。
そうしたら、ごま塩のような
黒い点が遠くから迫ってくるのがわかった。
何だろうあれは、そう思っていたら
点はどんどん近づいてきて
その点のひとつひとつに
羽が付いていることが分かった。

それは無数のトンボだった。
これはいったいどういうことだろう
そう思いながら、何か逃げ出したいような
目がはなせないような気持ちだった。
羽音が聞こえるくらいに
私の居るベランダの近くをかすめて、
マンションを乗り越えて行った。
まるで、戦闘機のようだった。
私は唖然として、それを見た。
それから気付いて
iPhoneで何枚か写真を撮ったけれど、
彼らの大編隊は飛び去って
残りの部隊が後に続いているところだった。

この前にトンボの群衆を見たのは
いつだっただろう。
多分、田舎から市内に向かう列車の窓から
谷間に飛ぶ沢山のトンボを見て以来だ。
あの後、私の世界はどう変わったのだったか。
何かの区切りであるような
そんな気がした。

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