夜の口

DVのように繰り返される冷たさと暖かさを
乗り越えるつもりがあるのなら
三月の粒は残り少なくなっている。
佐賀県のイチゴはすでに安くなっており、
スーパーのレジ打ちのお姉さんは
笑顔でお釣りを渡す。
桜は暗がりに咲き、自転車のペダルは軽い。
そして私は、川沿いの道を走りながら
永遠について考える。
夜のざわめきは、どんどん後ろに飛んで行き、
静寂を目指して、ゴム製のリングが回転する。
永遠とは手に入れるものではなくて、
失うことなのだった。
たとえば永遠の愛などないということを
あなたはよく知っている。
失うことによって、他者にとっての
永遠の種を蒔くことになるのだろう。
決して実らない種だ。
なぜならその時、私は損なわれているからである。
霧のような雨が降っていて、
折り畳みの傘など役にはたたないが、
重要なのは傘をさしているという事実なのだ。
多様化しなくてもよい。
それは真夜中に洗濯機を回すようなしめやかさで
私に降りてくるものなのだ。

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