顔の無い人々

花粉症の人には大変申し訳ないのだが、
私はマスクというものを付けている人が怖い。
まるでゾンビのように見えるのだ。
なにせ口も鼻もないのである。
目玉親父と何も変わらない。
表情を消した人たちの群れに中にいると
どこかに逃げ出したくなる。
どうしたものか。
昨今は諸般の事情で、マスクを付けている人が増えた。
運転手というものは、ほぼ全てマスクを付けている。
電車の運転手も、バスの運転手も、タクシーの運転手も。
乗り物は、表情の無い人たちが運転している。
この間の会議では、8人の出席者のうち
5人がマスクをしていた。
笑っているのか、怒っているのかわからない。
そういう人々が議論するとき
まるで目隠しをして歩いているように
不安が背中に張り付く。
マスクをしている人には分からないが
自分の顔は隠されているのだ。
表情、というのは気持ちを通じ合わせるための
大きな部分を占めている。
本当に今、マスクをしていなければ
ならないのだろうか。
花粉症だったり、風邪を引いたりしている人は
仕方がないと思うけれど、
そうでない人も多いのではないかと思う。
顔が見えるマスクというのは
開発できないだろうか。
あるいは、マスクではなくて、外気を
フィルタリングするゴーグルのような
装備は考えられないだろうか。
マスクの顔を見すぎて草臥れた時には
飲食店に行く。
飲んだり、食べたりする場所では
マスクをしないから
恐怖を感じなくてもすむのだ。
そこには顔があり、安らぎがある。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク