月別アーカイブ: 2013年3月

深み

月が最高に膨らんでいる時、 厚い雲の向こう側だったから、 私はその膨らみ具合を 見ることができなかった。 その代わりに、バリカンで髪を刈っていた。 新聞紙の上に遺伝子の欠片を落としながら 夜を通り過ぎていた。 今夜は風が … 続きを読む

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夜の口

DVのように繰り返される冷たさと暖かさを 乗り越えるつもりがあるのなら 三月の粒は残り少なくなっている。 佐賀県のイチゴはすでに安くなっており、 スーパーのレジ打ちのお姉さんは 笑顔でお釣りを渡す。 桜は暗がりに咲き、自 … 続きを読む

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春の物語

春が行く。 と、言ってもまだ三月で、春は始まったばかりだ。 このところ、季節は早回しで 桜は満開になろうとしている。 まるで、ビデオの早送りボタンが押し込まれているようだ。 人の季節も早回しにならなければいいけど、と思う … 続きを読む

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顔の無い人々

花粉症の人には大変申し訳ないのだが、 私はマスクというものを付けている人が怖い。 まるでゾンビのように見えるのだ。 なにせ口も鼻もないのである。 目玉親父と何も変わらない。 表情を消した人たちの群れに中にいると どこかに … 続きを読む

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タイミング

風の香りが少し甘く感じたら それが春というものだろう。 いつまでも煙は、南にたなびいてはいない。 テレビの四角い画面の中で、 ソメイヨシノが開花したと言っている。 去年よりも半月も早いんです。 そう言っている。 それがど … 続きを読む

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そういえば、砂の嵐で思い出した。 夜中には電波が無かった。 テレビ局は電波を送信していなかった。 消し忘れたテレビには 一面の砂嵐が映っていた。 昔の話し。 電波が無いというのは「無」ではなかった。 そこにはノイズという … 続きを読む

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砂の嵐

空の向こうから黄土色が押し寄せてきた。 そうして、すっぽりと砂の嵐につつまれ、 ごうごうと風は吹き付けて景色は失われる。 私は、洗濯物を急いで取り込んで、 変わってしまった空を見た。 ただ、温度が変わるだけで、こんなにも … 続きを読む

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啓蟄

寒いような寒くないような 暖かいような暖かくないような 冬のような冬でないような そういうのが、三月というものだろう。 風が吹いて、雨が降る。 啓蟄といって 虫が出てくる三月の五日。 真っ暗な宇宙空間を ぐるぐる回りなが … 続きを読む

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