存在する紙の森

配送を頼んでいた本棚が届いた。
それは組み立て式で、少し大きめだったので、
知り合いに頼んで、組み立てを手伝ってもらった。
二メートル×八十センチくらいの本棚を二個。
出来上がって、本を入れてみると、
本が命を持ったようだった。
それはまるで植物のような存在感を示していた。
木のそばに居るように、何故だか妙に落ち着く。
紙は、そもそも木なのだから
あたりまえといえば、あたりまえなのかもしれないが、
これほどまでに、私に働きかけてくるものだとは
思わなかった。
そうして私はお茶を飲みながら
背表紙をうっとりと眺めたりする。
何か語りかけてくる本があると手に取って
すこしめくって、また元に戻す。
そういういとしさというものを
自分の買った本に対して思うのは
ずいぶん久しぶりのような気がした。
かつて、本に頼り切っていた頃は
確かにそうだったが、いつの間にかそういう感覚を
忘れてしまった。
別に、紙なんて重いし、電子書籍でもいいんじゃないの
などと考えたりもしていた。
本は読む物としてだけあるのではなくて、
そこに存在していなければならない。
なぜなら、それが私の一部だからである。
そんなことも、忘れていた。

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