雑踏

雑踏の中に身を置いていると感じるのは
休日に街に出たときだ。
通勤の時に見るあれは、規則性を持って
同じ方向に向かって歩く人々で、
川に浮かべた舟のように、
それに乗って私も会社に辿り着く。
目的が異なる人々がいる場所に
ときどき、行った方がいいのだと思う。
主体性というものを見いだすために。

信号機は光を失っていて、
警察官が笛を吹いていた。
空はどんよりと曇っていて
今にも雨が降りそうだった。
歩行者天国という名前を誰が付けたのか。
ここは本当に天国なのだろうか、
と思いながら、私は写真を一枚撮った。
それから、細い階段を下りて、
レストランでパスタランチを食べた。
パンの皿は温めてあり、
オニオンスープは優しい味だった。
赤々と燃える釜でピザが焼かれていて、
ベレー帽をかぶった店員が
忙しく働いていた。

ものが見えるということは
自分の内側が静かである
ということだろうと思う。

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