端から現れる

空の端、地の果てから、夏の分身のような雲が
もくもくと昇っていた。
それに夕陽があたってオレンジ色に染まり、
なんだか妙に淡い夕方だった。
風が強くて、洗濯物がひらひらと揺れていた。
夏の夕暮れというのは、こんな感じだっただろうか
と思いながら、ベランダでいつまでもそれを見ていた。

抗生物質のおかげで、風邪はずいぶんとよくなった。
代わりに少し嗅覚がやられて、ものの香りが
分からなくなっているけれど。

僕はただ、麦茶をごくごくと飲んで、飲み干して、
それでまたボトルに水を入れ、麦茶のパックを突っ込んで
冷蔵庫に戻し、バタンとドアを閉じる。
麦の水が体内を巡っているのを感じる。
自分にとっての夏というものを、どうにかして
定義づけしようとするのだけれど、
そもそもそんなことが、何の役に立つのかも分からない。
意味のある事なんて何もないのではないか
そんなことを考えながら、麦茶の成分が
染み出して、水の色を変えるのを待っている。

今日も何もしなかった、という思いが
なぜだか苦しみを連れてくる。
出来なかったのではなくて、しなかったという思いが、
漬け物石のように押さえつけて、違うものにしようとする。
結局のところ何と比較するか、という問題なのだろう。
きっと、昨日の自分と比較すべきなのだ。
見えない何かではなくて。

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