渦によって変わる光のこと

強い風とそれから雨が降って
電車が止まったりした。
あれは「台風」という名前が付いているから
あぁ台風だからと思って、少し安心するのだと
最近読んだ本に書いていた。
確かに、名前を付けるということは、
しっかりと箱にしまうような事だと思う。

そして台風は、何かを持ってくるのだろうか
それとも持ってゆくのだろうか。
詳しい事はわからないけれど、
空気が変わったのが分かる。
空気が変わると光が変わるのだ。
何もかもが輝きだしてはじける。
そういうことを、どこかで待ち望んでいる。
いつものように僕は空を見ている。

帰りにデパートというところに寄った。
どこからともなくいい香りがして、
僕は太陽の国のことを思い出した。
かすかなマンゴーのような香り。
線香のような香りよりも、甘い香りが好き。
暑いところはいつでも
そういう香りがしたのだ。
記憶の鍵がカチャリと開く気がする。
扉までは開かないのだけれど。

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