ゆうべ、心を食べた。
ソテーした牛の心臓。
とくとくと血液を送り出していたそれは
日本では「ハツ」と呼ばれているけれど、
英語のheartsが語源なのだと言う。
ひとつなのにね。
生きているということは
心がつねに動いていることを言うのだな
と、ハツを食べながら思った。
梅雨に入ってから
それらしい天気が続いている。
今日も一日霧のような雨が降っていた。
傘を差していても
それは体にまとわりついて
しっとりと服を濡らす。
梅雨はストーカーのように
どこまでも付いてくる。
南の海上に
ぐるぐると渦を巻いているものがあって
それは揺らぎながら
北に昇ってくる。
同じところで渦を巻いていた方が
ずっと長く生きていられるのに、
そうやって、自分を消滅させる方向に進むのは、
ちょっとばかなのか、
それとも好奇心が旺盛なのか、
いや、心というものが
無いからだろう。