茉莉花

歩きたくなるのは
季節のせいだろうか
それとも何か足りないものが
あるのだろうか。
そんなことは分からない。
世の中には理由のないことが沢山ある。
そういうものは
解釈されることを望んでいる。
意味というのは見つけるものなのだ。
そして
暗闇の中からジャスミンの香りがする。
白い小さな花びらが、五月の終わりを告げている。
しかし、私の頭の中に広がるのは
ベルトコンベアーの上を流れてゆく
蒸した茶葉のイメージである。
それは幼い記憶。
狭く、薄暗い製茶工場に立っていた。
周りにいたはずの人々は、記憶から消えていて
ただ、ベルトコンベアーの音と
強烈な香が全てを支配している。
断片というのは
つなぎ合わせるためのカケラではなくて
それそのものが深い意味を持っている。
だって残ったものだけが、すべてでしょう。

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