
太陽と月を同じところに見る
ということは、とても特別なことで、
人生の中で何度もあるわけではないが、
私たちは、歯磨きペーストのチューブから
押し出されるように生きているので、
何がどう大切なのか
考えるための余裕も必要もあまりない。
実際に何か特別な事態に出会って
初めてその意味について考える。
それは愚かなことであるが、
そういうふうにしか生きられないのが
人という物である。
それよりも驚くのは
まるで予言のように、
月が太陽を隠すということを
色々なメディアが発表し、
日食グラスというものが街で売られ、
どのエリアで日食が見られると
地図や天気予報が発表され、
それに合わせて空を眺めると
ぴったりとその時間に
月が太陽を覆い隠すということだ。
私たちは馴れてしまって、
そういうものだと思っているのだが、
そんな事を知らない者が
この事態を目撃したなら
とても不気味なことだろう。
玄関の前から、重なった月と太陽を見て
そんなことを考えた。