白と白

なぜか熱心に僕に育毛剤を勧めた須藤くんは
来月結婚するらしい。
彼の頭は見違えるように黒々としていて
しかしそれが、何のせいか僕にはわからない。
フロアの端の方にいる須藤くんに
「おめでとう」とチャットで書き込むと
「お先に人生の墓場に行ってきます」
とメッセージが返ってきた。
人はなぜ、思ってもいないことを言うのだろう。
僕は×のボタンを押して、チャットのウインドウを閉じた。
それから窓の外、いつまでもやまない雨を見る。
そこには白濁した世界が広がっていて、
いい気持ち、でも何かが足りない。
川が流れていればいいのにと思った。
高いところから低いところに流れるもの。
そう、海はずっと低いところにある。
河原に立って、石を投げ込んでみたい。
何かを行為で現すことが大切なのではないか
時々そう思う。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク