月別アーカイブ: 2012年4月

春風

季節が常に動いているように 私の細胞も常に入れ替わっている。 しかし、ずっと同じものであったかのように 振る舞うのは妙なことであるなと思う。 変わらないことなどありはしないが、 変わらないように見せようとする力が 何事に … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 春風 はコメントを受け付けていません

白と白

なぜか熱心に僕に育毛剤を勧めた須藤くんは 来月結婚するらしい。 彼の頭は見違えるように黒々としていて しかしそれが、何のせいか僕にはわからない。 フロアの端の方にいる須藤くんに 「おめでとう」とチャットで書き込むと 「お … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 白と白 はコメントを受け付けていません

通夜

遺影は微笑んでいるように見えた。 それは参列者のためのものだ。 サイズの合わない礼服を着て 香を炭の上にまぶして手を合わせた。 友人の父親のお通夜はひっそりとしていた。 人が死ぬ。 永遠に目に見えなくなる。 目に見えなく … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 通夜 はコメントを受け付けていません

なにもない

もう降っているよ と、隣の席の同僚が言った。 窓の外を見ると ちょうど暗くなった空に 閃光が走ったところで それから遅れて 雷の音がたどりついた。 光と共に音は生まれたのだ。 光からの距離を思っていると 窓を打ち付けるよ … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | なにもない はコメントを受け付けていません

無題という名の題名

いつも、心を静かな場所に置いて それから、言葉を選んで 文章を書かなければ、と思っている。 そうしないと、言葉に力を与えられないから。 物語よりももっと、言葉そのものに 力を与えたいと思う。 物語はいつも消費され、失われ … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 無題という名の題名 はコメントを受け付けていません

水の形

雨が降っている。 夜の雨。 窓の向こう側から雨の音。 ところで私のほとんどは、水でできている。 水の星に生まれたのだから 当然といえば当然なのだが、 雨を見るたびに、そのことを考える。 考える水になる。 摂っても、摂って … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 水の形 はコメントを受け付けていません

曲がる

ペンを落としました。 インクを入れてから ペン先についた汚れを拭おうとした時でした。 ぐにゃりと曲がったペン先を 呆然と眺めていたら、 悲しみがやってきました。 悲しみというのは、 色々なものの蓋を開けてしまいます。 喜 … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 曲がる はコメントを受け付けていません

沈丁花

夜のかどを曲がると君は 甘い花の香りにはっとする。 香りにひもづいている 懐かしい記憶が その瞬間に広がったからだ。 しかし、暗闇から香ってくる その花の名前を 思い出すことができない。 姿の見えない花の色を 思い浮かべ … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 沈丁花 はコメントを受け付けていません

星の過去

あなたが見る私は あなたに見えるよりも先に 何かをしている。 つまり残像です。 光が1秒間に、30万キロ進むとすると たとえば3メートル先のあなたに 届くまでに、10ナノ秒はかかるでしょう。 あなたに見えている私は 少な … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 星の過去 はコメントを受け付けていません

季節

何もかも吹き飛んでしまいそうな 強い風が吹いたあと 四月になった。 季節というのは、 荒れ狂った後に変わる物だっただろうか。 そうだったような気もするし、 たまたまそういうことに 出くわしただけのような気もする。 必然性 … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 季節 はコメントを受け付けていません