40年後の世界

ある日、晴れる。
晴れるというのはすなわち
青い色で塗りつぶされることである。
それは、空だから
というただそれだけの理由によって
そこに青があるのである。
そしてまた君は当たり前のように
それを受け入れて、
遠くにそびえる富士山という山が
白い雪を纏っているのを見るわけだ。
強い風が吹いている。
花粉もすさまじく飛んでいるだろう。
旋回する鳥の種類を
君は見分けることなどできないだろう。
そうして眼下には
解体されるコンクリート工場の
猥雑な風景が広がっているのだ。
そうして形というものは無くなって
明るい色のパワーショベルに
まさぐられて何処かに失せる。
世界というのは、そうやって
無くなって、出来上がり
また無くなって出来上がる。
一服やりたいところだけれど、
あいにく君は煙草を吸わない。
健康に気をつけているわけではない。
ただ、臆病だっただけだ。
カメラを向けて何を残そうというのか。
40年後の世界に
君は存在しないのだ。
ただ堆積する何かになっている。
泣いたって叫いたって
何も変わりはしないさ。
せいぜい楽しくやればいい。
それが一番難しいということくらい
知っているけれど
嘘というのは、そういう時につくものだよ。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク

40年後の世界 への1件のコメント

  1. Michele のコメント:

    Cool!

コメントは停止中です。