袋小路というのは
出口のない行き止まりのように思える。
しかし、そうではないのではないか。
そもそも、出口というものが
どんなところにもあるというのは
単なる思い違いだろう。
入ったところから出ればいいだけのことだろう。
玄関が
入り口でも出口でもあるように。
雨の日はトナーの臭いがする。
会社の自分の席まで、あのカーボンの
つんとした臭いが漂ってきて
どうにも嫌だった。
いや、それが雨のせいなのか、
それとも月曜日で、コピーを取る回数が
多いだけのことか分からないのだけれど。
「なんか、カーボン臭がひどくない?」
「え?いえ、何も臭わないですよ?」
同僚は首を捻って言う。
本当は自分もその臭いが本当に
コピー機から漏れ出しているものだけか
今ひとつ自身がない。
なぜなら帰りの電車でも同じ臭いがしたから。
そして、帰り着いて、
エアコンの下でも同じ臭いがした。
カーボンの臭い。
自分の鼻がおかしくなっているのだろうか。
窓を開けてベランダに出る。
そうするとそこに夜があって
あぁ夜だと思う。
小さな光が点在しているのを見て。
人との距離を思うのだ。
そしてそれをカメラに納めてみる。
明日は暖かくなるそうだ。