雨は上がっていた。
空気の肌触りを確かめてから
アスファルトの上
足を交互に前に出して
僕は会社に行き、
そしてスーパーに寄って帰ってくる。
ただそれだけのこと。
桃源郷なんてどこにもありはしないけれど
啓蟄まではもうすぐで、
桃の花も咲くだろう。
待っていればやがて
春は来るだろう。
しかし、何もしなくても
春は過ぎ去ってゆくだろう。
季節とはそうやって通過するものだから。
そんな当たり前の事を
この頃よく考える。
歩きづらい日だった。
向かい風の中を歩くような気持ちだった。
やたらと目の前に人が立ちはだかって
そういった障害物を避けながら歩いた。
イヤホンの白と黒に塗り分けられた
ケーブルをとても邪魔に感じた。
急ぐ必要などありはしないのに
おかしなものだ。

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