さがしもの

ナイフを探しに行った。
少しだけ離れている公園に僕は立っていた。
スイス製のアーミーナイフは
迷彩柄のデザインだった。
優しい人たちとピクニックをしたのは
何ヶ月も前のことで
その時になくしたアーミーナイフが
まだそこにあるとは思っていなかった。
僕が探しに行ったのは、きっともっと別のものだ。
落ち葉が厚く積もっていて、
地面は見えなかった。
辺りは、小さな子供を連れた大勢のお母さんたちが
シートを敷いて、おしゃべりをしていた。
太陽は高い位置から、光を放っていて
心地の良い昼間を演出していた。
近くを流れる小川は、それをキラキラと反射して僕の所まで届け
鴨は知らん顔で、流れをさかのぼって光を揺らした。
僕は落ち葉を蹴飛ばして、かさかさとした音を聞く。
そのようにして季節を心の中に取り入れたかったのだ。
ナイフはやっぱりどこにもなかったけれど、
探しに来てよかったと思った。
大切なのは、何かを見つけることではなくて
探そうとすることだ。
そう思う。

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