異常乾燥注意報

 乾いている。
 空気のことだ。
「この時期らしい気温でしょう」
 と、ゆみきさんは言う。
 通り過ぎてゆく言葉を捕まえてみる。
 男らしい。
 女らしい。
 社会人らしい。
 学生らしい。
 中年らしい。
 若者らしい。
 老人らしい。
 秋らしい。
 冬らしい。
 師走らしい。
「らしさ」というものが
 どこか喉の奥に引っかかるのは
 むかし、それを忌み嫌っていたからだ
 ということに気付く。
 それはおぼろげなものだ。
 実体がない。
 どこからか集まってきて
 固まっているように見える。
 つぶつぶの信号機みたいなものだ。
 構成要素など
 どうでもいいことなのだけれど、
 それが見えたって構わない
 というデリカシーの形状、
 それは正しくないのではないか
 そう思っている自分がいる。
 それにしても脚が乾く。
 風呂上がりにボディミルクなるものを
 脚に塗り込んで眠る。
 なにもかも歳のせいに
 しておけば楽だろう。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク