いつから赤い

会社をサボって病院に行ったら、
夏でもないのに、たくさん血を吸われた。
女医は大きなマスクをしており、
私には目しか見えなかった。
人間の顔というのは、目と、鼻と、口が
なければおかしい。
正月の福笑いにだって、そのくらいある。
目しか見えないというのは、やはり間違っていて
それはとても怖ろしい。
だから、私はついでにインフルエンザの
ワクチンも注射してくれるように頼んだ。
恐怖は一度でたくさんだからだ。

帰り道は光で溢れていた。
そういう日は、樹と水を見るべきだ。
都会において、それらは公園にある。
そうして私の足は、公園へと針路を取る。
そこには、休日の喧騒はなかった。
誰も、自意識過剰な唄を歌ってはいなかった。
木々は色づいて水面に映っていた。

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