気付かないことはたくさんあるけれど、
それらを認識できるのは気付いた時だ。
マンションの入り口を入って、
エレベーターまで行く間にドアが一枚ある。
それは鉄のフレームに分厚いガラスが填っていて、
とても重いドアで、開けるのに少し力が必要だった。
自転車を部屋の前まで上げている人たちにとって
それはとても面倒なドアで、毎回ぶつけるようにして
ドアを開けるので、ドアの下部は傷だらけになっていた。
あまりにも傷がひどいので、ためしに
開放したままにしよう、ということになって、
ドアを金具で固定し、開けたままにした。
それはドアの傷を防止するためだったが、
開いたままのドアを通り過ぎるたびに
何だか気持ちが軽くなるのがわかった。
どうも、自分はそのドアを開けるということを
随分ストレスに感じていたようだ。
それを開け放つ前までは、そんな事は考えなかった
少し重いドアだなというくらいに考えていた。
前に進むために、押したり、避けたりすれば
特に問題はないと思っていることでも、
それを取り除いたり、やめたりすることで
ずいぶんと気持ちは変わってくるのだということに
今更ながら気付いて、少しおどろいている。